複雑な業務プロセスを「見える化」したい、チーム内での情報共有を円滑にしたい、業務の非効率な部分を特定して改善したい－。これらの課題を解決する強力なツールが「フローチャート」です。
しかし、基本的な記号の使い方から効果的な作成方法まで、正しく理解している方は意外と少ないのではないでしょうか？本記事では、フローチャートの基礎から実践的な活用方法まで、初心者からプロフェッショナルまで役立つ情報を徹底解説します。業務効率化の第一歩として、まずはフローチャートの基本を押さえていきましょう。
Contents
フローチャートの基本と重要性
ビジネスにおけるフローチャートの役割と活用メリット
フローチャートは、複雑な業務プロセスを視覚的に表現し、経営効率を向上させる強力なツールです。特に、業務の標準化や効率化を推進する場面で大きな価値を発揮します。
フローチャートの主要なメリットには、業務の可視化による全体像の把握、属人化の防止、プロセスの標準化、そしてミスの防止が挙げられます。
業務全体を図示することで、複雑な工程の関係性を一目で理解できるようになり、チーム全体での情報共有が容易になります。また、文書だけでは伝わりにくい業務の流れも、視覚的に表現することで、誰もが同じ理解を持つことができます。
特に重要なのは、フローチャートを通じて業務プロセスの問題点や改善機会を発見できる点です。全体を俯瞰的に見ることで、無駄な工程や非効率な部分を特定し、より効果的な業務改善を実現できます。
| フローチャートの主なメリット | 具体的な効果 |
| 業務の可視化 | 全体像の把握と共有が容易に |
| 属人化防止 | 誰でも同じ理解・実行が可能 |
| プロセス標準化 | 効率的な業務遂行の実現 |
| ミス防止 | 抜け漏れのない業務管理 |
ビジネスでのフローについては以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
効果的なフローチャート作成の5つの原則
効果的なフローチャート作成には、5つの重要な原則があります。第一に、目的と対象を明確にすることです。何のために、誰に向けて作成するのかを定義することで、必要な情報を適切に盛り込むことができます。第二に、プロセスの流れを左から右、上から下に統一します。読み手が直感的に理解できる自然な流れを意識することが重要です。
第三に、一つの記号には一つの動作や判断のみを記載します。複数の内容を詰め込むと理解が難しくなるため、シンプルな表現を心がけましょう。第四に、分岐は必要最小限に抑えます。過度な分岐は図を複雑にし、理解を妨げる原因となります。
最後に、全体のバランスと見やすさを重視します。適切な余白を設け、記号の大きさを揃えることで、プロフェッショナルな印象を与えるフローチャートが完成します。これらの原則を守ることで、誰もが理解できる実用的なフローチャートを作成できます。
フローチャートの基本記号と意味
開始・終了（ターミナル）
プロセスの開始や終了を示す楕円形の記号です。
フローチャートはこの記号から始まり、この記号で終わります。開始時には「開始」、終了時には「終了」と記載するのが一般的です。
処理（プロセス）
データの操作や計算など、具体的な処理を示す長方形の記号です。
各ステップで行われる具体的な作業内容を記述します。複雑な処理の場合は、別のフローチャートに詳細を分けることもあります。
判断（ディシジョン）
条件による分岐を示すひし形の記号です。
「はい」または「いいえ」などの二択の結果に基づいて、プロセスが異なる方向に進む場合に使用します。分岐が多い場合は、チャートが複雑になりすぎないよう注意が必要です。
入力・出力（データ）
データの入力や出力を示す平行四辺形の記号です。
ユーザーからの情報入力や、システムからのデータ出力などを表します。具体的なデータ内容を明記することで、プロセスの理解が深まります。
繰り返し（ループ）の開始と終了
特定の処理を繰り返す際の開始点と終了点を示す記号です。
ループ処理を明示することで、同じ処理の反復を簡潔に表現できます。無限ループにならないよう、終了条件を明確に設定することが重要です。
ページ内結合子
フローチャート内で離れた部分を結びつけるための記号です。
同一ページ内でプロセスが離れて配置される場合に、プロセスの流れを示すために使用します。記号内に同じ識別子を記入し、対応する箇所を明確にします。
ページ外結合子
フローチャートが複数ページにまたがる場合に、プロセスの連続性を示すための記号です。通常、円形または楕円形で表され、識別用の番号やアルファベットが記載されます。
ページ内結合子と似ていますが、異なるページ間でフローチャートを接続するために使用します。特に、大規模な業務プロセスやシステム設計では、この記号を適切に活用することで、図の見やすさを維持できます。
業務フローチャートの作成手順と実践テクニック
業務プロセスの分析と要素の洗い出し方
業務プロセスの分析を効果的に行うには、まず現状の業務フローを可視化することが重要です。なぜなら、部門間をまたぐ複雑な業務の全体像は、経営者でさえ完全には把握できていないことが多いためです。
可視化の方法として、世界標準であるBPMI（ビジネスプロセスモデリング表記）を活用することで、誰もが理解できる統一された形式で業務フローを表現できます。
業務プロセスの分析では、以下の6つの視点からの検証が効果的です。
・ビジネスルールの明確性
・本来業務と代行業務の区分
・個人スキルへの依存度
・慣習や伝統による非効率性
・人的リソースの限界
・部門間連携の課題
また、現場でのヒアリングや業務日報の活用により、実態に即した問題点の把握が可能となります。特に、営業部門以外でも業務日報を導入することで、具体的な改善ポイントを特定しやすくなります。
| 分析の重要ポイント | 具体的な手法 |
| 業務の可視化 | BPMIを用いた統一的な図式化 |
| 現状把握 | 業務日報の活用、現場ヒアリング |
| 分析の視点 | 6つの観点からの業務検証 |
業務フローについては以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
段階的な業務フローチャートの描き方
業務フローチャートの作成は、5つの段階的なステップで進めることで、効率的に完成させることができます。まず第一に、フロー図作成の目的を明確にし、達成したい成果を具体化します。次に、ノートやホワイトボードを使って業務の全体像を大まかに書き出します。
この段階では、関係する人や組織を整理し、業務の起点から終点までの大枠を把握することが重要です。個々の作業レベルではなく、業務全体の流れを捉えることに注力します。
続いて、使用する記号や表記方法などのルールを設定します。これにより、誰が見ても理解しやすい統一された図式を作成できます。その後、エクセルやパワーポイントなどのツールを使用して詳細な業務フローを作成します。
最後に、経験者の目で抜け漏れをチェックします。特に新規事業やシステム開発では、見落としが重大な問題につながる可能性があるため、慎重な確認が必要です。
よくある課題と改善のポイント
業務フローチャートの作成では、いくつかの典型的な課題に直面します。最も多いのが、承認プロセスの複雑化と関連部門の多さです。これにより、承認待ちや差し戻しが頻発し、業務全体の進行に遅れが生じやすくなります。
効果的な改善には、業務の棚卸しと現状フローの把握が不可欠です。各業務の内容、工数、関係部門、所要時間などを洗い出し、フローチャートで可視化することで、全体像を俯瞰的に理解できます。
課題分析には、ロジックツリーやBPMN（ビジネス・プロセス・モデリング表記法）、ECRSなどのフレームワークが有効です。
具体的な改善方法としては、過剰な承認回数の削減や、ITツールの導入による自動化が挙げられます。実行後は効果検証を行い、PDCAサイクルを回すことで、継続的な業務フローの最適化が実現できます。
フローチャート作成ツールの選び方と活用法
主要なフローチャート作成ツールの比較
現代のビジネスシーンでは、効率的なフローチャート作成をサポートする多様なツールが提供されています。代表的なツールとして、Microsoft Visio、Lucidchart、draw.io、Cacooなどが挙げられます。
これらのツールはそれぞれに特徴があり、それらを加味して比較検討し、用途に応じて選択することが重要です。
フローチャート作成ツールについては以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
フローチャートを使った業務改善の進め方
現状分析から改善提案までの手順
業務フローの最適化は問題点の洗い出しから始まります。まず、現状のフローチャートを詳細に点検し、不必要な業務や作業の無駄が生じている箇所を特定します。意味のない二重チェックや、部署間での過剰な書類移動による承認の遅延などが、典型的な非効率の例です。
フローを改善するためには、課題に優先順位とゴールを設定することが重要です。全ての問題を一度に解決しようとするのではなく、重要度の高い課題から段階的に取り組むことで、確実な成果を上げることができます。その際、「いつまでに何をどう改善するか」という具体的な目標設定が、計画の実効性を高めます。
改善策の実施後は、定期的な効果検証が不可欠です。PDCAサイクルを継続的に回すことで、成功要因の分析や新たな課題の発見が可能となり、より良い業務フローの構築につながります。効果検証では、数値目標の達成度だけでなく、現場の声にも耳を傾け、実務に即した改善を進めることが重要です。
ボトルネックの特定と解決策の立案
フローチャートを活用してボトルネックを特定する際は、まず「ムリ・ムラ・ムダ」が発生している箇所に着目します。これらの問題点は、業務プロセスの流れを図示することで視覚的に把握しやすくなります。
特に製造業では、機械装置の生産能力や物理的な制約条件が、重要なボトルネックとなることが多いです。
業務量の定量化が難しいバックオフィス業務では、「現在の業務量が2倍になった場合、最初に支障が出る工程はどこか」という視点で分析すると、ボトルネックが見えやすくなります。
ボトルネックの処理能力は、業務全体のパフォーマンスを決定づける重要な要素です。そのため、まずはボトルネック工程の処理能力を最大限に活用し、その後、全体の業務フローをボトルネックに合わせて最適化することが効果的です。
この最適化により、一時的に処理能力は低下するように見えますが、無駄なコストを削減でき、結果として全体の効率が向上します。
改善効果の測定と評価方法
業務改善の効果測定には、適切な評価基準の設定が不可欠です。フローチャートを活用することで、業務プロセスの改善前後の比較が容易になり、具体的な数値目標の達成度を可視化できます。
効果を測定する主要な指標として、処理時間の短縮率、エラー発生率の低減、コスト削減額などが挙げられます。これらの指標を定期的にモニタリングすることで、改善施策の有効性を客観的に評価できます。
効果測定は、実施前・実施中・実施後の3段階で行うことが推奨されます。特に、実施中の評価では、フローチャートを用いて問題点を早期に発見し、必要な修正を加えることが可能です。
評価の際は、数値目標の達成だけでなく、従業員の満足度や業務品質の維持も重要な判断基準となります。フローチャートを用いて改善前後の工程を比較することで、業務の質を維持しながら効率化を図れているかを確認できます。
業種別フローチャートの活用事例
製造業における工程管理フローチャート
製造業の工程管理において、フローチャートは生産ラインの効率化に不可欠なツールです。原材料の入荷から製品の出荷まで、各工程を視覚的に整理することで、作業の無駄や重複を特定できます。
製造業の工程管理フローチャートでは、業務流れ図、業務処理定義書、ビジネスルール定義書などの要素を統合的に活用します。
特に重要なのは、システム間の連携部分を明確にすることです。生産管理システム、在庫管理システム、品質管理システムなど、複数のシステムが連携する製造現場では、各システム間のデータフローを正確に把握することが重要です。
フローチャートの作成では、まず全体の業務プロセスを把握し、次に各工程での具体的な処理内容を記述します。その際、判断基準や制約条件を明確にし、システム連携部分を詳細に示すことで、より実用的な工程管理が可能になります。これにより、製造ラインの効率化だけでなく、品質管理の向上にも繋がります。
サービス業の顧客対応フロー
サービス業における顧客対応フローチャートの実装は、段階的なアプローチで進めることが重要です。初期設計が完了したら、まず必要なハードウェアとソフトウェアを準備し、システム全体の構成を整えます。
フローチャートに基づいて各設定をシステムに反映させる際は、細かな設定ミスが発生しないよう、特に顧客とのコンタクトポイントとなる部分で慎重な確認が必要です。
システム設定完了後は、テストフェーズへと移行します。実際の運用をシミュレーションしながら、顧客応対の流れやシステムの動作を入念に確認し、不具合の有無をチェックします。
テスト結果をもとに必要な調整を行い、最終的に本番環境へと移行します。この際、オペレーターへの研修も並行して実施することで、スムーズな運用開始が可能となります。
これらのステップを着実に実行することで、効果的な顧客対応フローチャートが実現し、顧客満足度の向上につながります。
事務処理における承認フローの最適化
承認フローの最適化には、業務の効率化とリスク管理の両立が不可欠です。優れた承認フローを構築するためには、まず現状の承認プロセスを詳細にフローチャートで可視化し、ボトルネックを特定します。
承認プロセスでよく見られる課題として、過剰な承認ステップや非効率な承認ルートが挙げられます。これらを解消するため、承認権限の適切な委譲や、並列承認の導入を検討します。特に重要なのは、リスクレベルに応じた承認フローの設計です。
ワークフローシステムの導入も効果的な対策の一つです。スマートフォンやタブレットからの承認を可能にすることで、承認者の不在による業務の停滞を防ぎます。また、申請内容の履歴管理や監査証跡の保持により、コンプライアンス要件も満たすことができます。
最適化されたフローチャートに基づき、承認プロセスを標準化することで、部門を超えた効率的な業務運営が実現可能となります。
フローチャートの活用で業務改善を加速させる
フローチャートは、業務の可視化を通じて、効率向上やミス防止を実現する強力なツールです。本記事では、フローチャートの基本から応用までを詳しく解説し、業務改善の鍵となる活用法を紹介しました。
適切な記号の使用やシンプルな構成を意識することで、誰でも直感的に理解できるフローチャートを作成できます。また、業務プロセスの分析を行い、ボトルネックを特定しながら、PDCAサイクルを活用することで、継続的な改善が可能になります。
業務の最適化を目指す企業にとって、フローチャートの導入は欠かせないステップです。ぜひ、今回紹介した作成手順や改善のポイントを活かし、業務効率化に取り組んでみてください。
なお、弊社ではお客様のビジネスに最適な施策立案支援をする中でフローチャートを書くこともあります。よって、導入や活用についてのナレッジを知りたい場合はお気軽にお問い合わせください。よろしくお願いします。