PM(プロジェクトマネージャ)に求められる「コミュニケーション・マネジメント」とは 〜コミュニケーションは設計で担保すべし〜

「会議を設定したものの、結局話がまとまらず物事が決まらない」「プロジェクトが上手く進まない。一体何が原因なのか?」とお悩みではないでしょうか?プロジェクトの成功を左右する立場にあるプロジェクトマネージャですが、専門知識以上に重要な要素があります。それが、「コミュニケーション・マネジメント」です。

ありとあらゆるプロジェクト現場を経験し、法人化するまでに至った自身の体験に基づいて、プロジェクトや事業を成功に導くための”コミュニケーションの仕組み”をブラッシュアップするノウハウを解説します。

プロジェクトマネジメントの世界標準「PMBOK」でも重要性を言及

PMBOKとは?

世界中のプロジェクトマネジメントに関する知識を体系的にまとめたのが「PMBOK」です。アメリカの非営利団体によって作られました。PMBOKはプロジェクトマネジメントの世界標準とされています。

プロジェクトマネジメントの定義

PMBOKでは「プロジェクトの要求事項を満足させるために、知識、スキル、ツールと技法をプロジェクト活動へ適用すること」と書かれている

なぜプロジェクトマネジメントが重要なのか

結論からいうと、プロジェクトマネジメントを軽視すると成果が出ないからです。目的だけだと成果は得られません。

プロジェクトマネージャが明確に意思決定し、いつ・どこで・誰が・・・を設定した上で旗振りしなければ現場は動けず、絵に描いた餅となってしまうことがほとんど。

私が経験した現場で居合わせたのが、”物事を決定できないプロジェクトマネージャ”でした。判断軸が曖昧だったがゆえに意思決定ができず、現場は統率が取れていませんでした。優秀なスタッフが配置されていましたが、何をどうしていいのか分からず疲弊しきっていました。

成果を出すためにも、プロジェクトマネージャが7W3Hまで設定し明確に旗振りしなければなりません。新たな戦略が顕在化し、成果自体が大きく変わってきます。

プロジェクトマネージャはコミュニケーション・マネジメントが必要

メリット

PMBOKによると、「プロジェクトの成功因子は15%が専門知識、85%がコミュニケーション設計」だそうです。

プロジェクトを成功させるためにはコミュニケーションを設計する事が重要です。そこで必要となるのが「コミュニケーション・マネジメント」のスキルです。次のようなメリットが得られます。

成果が得られる

  専門知識によって成果が分かれる部分もありますが、大多数はそれが全てではありません。権限と役割、適切なコミュニケーションライン、会議体の設計により一定の成果が得られます。

期日までに行動を達成できる

  =成果につながります。 ※但し、各会議においてファシリテーションのスキルセットが必要

コミュニケーションが上手くいかない時は、大体の場合プロジェクトマネージャに責任があります。

コミュニケーション・マネジメントとは

では、コミュニケーション・マネジメントとは一体どのようなものなのでしょうか?主なマネジメント法則が以下のように挙げられます。

  • メンバーに権限と役割設定、それぞれのミッションが定まっているか
  • 適切な人を配置できているか
  • 適切な役割と接点を持てているか
  • コミュニケーション設計や体制図ができているか
  • 関連するステークホルダー(他部署・外部含む)を適正に設定できているか

これらはプロジェクトマネージャが必ずおさえておくべきものです。

コミュニケーションのプロセスを「分解」して「計画」しよう

具体的な方法論に入っていきます。適切なコミュニケーションを設計するために、プロセスを分解し計画を立てていきます。

プロセス分解と計画方法

目的と接点を洗い出す

他部署との連携も出し切ります。 

どのぐらいまで分解するか

下表のように、7W3Hまで落とし込むと良いです。

いつ(時期・着手〜期限)when
どこで(場所)where
誰が(主体) who
何を(内容) what
なぜ(理由・背景・動機・目的) why
誰に(相手) whom
誰と(関係者) with whom
どのように(手段)how
どのくらいの数(数量・規模感・範囲) how many
いくらで(金額) how much

分解と計画のポイント

いきなり始めても上手くいかないことが多いです。ある程度の知識が必要なので、前述の7W3Hだったり、5Whysなどのフレームワークを活用するのがおすすめです。

※フレームワークについては以下の記事でも詳しく解説しています。

プロジェクトのコミュニケーションは「特性」を知って分類する

ところで、皆さんの組織において会議はどのぐらいの頻度で行われているでしょうか?

それぞれの会議には本来、意味があるものだと思います。しかし私自身の経験では、会議自体が形骸化してしまっていたり(資料を読み上げるだけとか)、チャット等のテキストで伝えたら会議せずとも完了するのにな、と思うようなものもあったりします。

メンバーが何となく集まったところで意味は薄く、それどころか何も決まらずに終わってしまうことの方が多いです。

何も決まらない × 会議の数が増える × 参加人数が増える =会社として莫大なコスト

これらの原因は、「特性」を理解していないことに尽きます。

おさえておきたい「特性」とは

「会議=コミュニケーション」と定義すると、インプット(聞く・読む・見る・質問する)とアウトプット(伝え方・人間力)から成ります。それらを分解すると4つの手段に分けられ、特性が違ってきます。

インプットとアウトプットの手段と特性 

                                           (弊社研修資料より)

特性によってコミュニケーションの方法を変えるべき

現場でよくあるのが、”必要のない会議”です。とりあえずメンバーを集めて会議することで何かが決まった事は経験上ほぼありません。チャットツールでのテキストで十分な場合もあります。

PMが情報の設計をすべし

また、これもよくあるのが”やたらと発生する資料作成”。これも経験則ですが、適切な時に・適切な場面で・適切に伝えられていないことが要因だと考えられます。

本当にその資料は必要なのか?バックオフィスのメンバーに資料作成を依頼することはできないか?を思考し、情報を設計することもプロジェクトマネージャがなすべきことです。

マネジメントは体制図を理解しステークホルダーを管理すること

PMが組織を把握することの必要性

プロジェクトマネージャは、自身のチームのみならず俯瞰的に組織を把握することも重要です。なぜならば組織内の人・役割・コミュニケーションラインの設計が必要だからです。

ステークホルダーの管理とは?

プロジェクトマネージャに任命された時点で、プロジェクトに関わるメンバーに対し以下の内容を知る必要があります。

  • 誰が
  • どこにいて
  • どの役割があって
  • どれくらいの時間を投下できて
  • 誰と仕事をしていて
  • どの部署と(どこと)接しているか

これらを知ったうえで最適化する必要があります。

具体的なスキルセットとマネジメント方法

ステークホルダーを適切に管理するためのポイントをまとめてみました。

ポイント1(大前提)「明確にその人のスキルセットやwillを見極められているか」

役務に値するか否かです。この大前提が合っていない組織も実際にあります。

過去にあった例として、事業の数値をあげないとやらなけばいけないが、個人の「これがやりたい!」が優先されてしまっている状態に陥っていたことがありました。著しく認識力が弱く、あるべき示唆を提供し、推奨アクションを提示しても、自分の役務として認識していない・重要度が理解できていないこともありました。

これをふまえたうえで、以下のポイントに派生していきます。

ポイント2:役割や権限が曖昧で釣り合っていないところがないか

数値を上げていくオーダーなのに施策決定権限がない、といったことも現場あるあるです。

ポイント3:適切な人に適切な権限を渡せているか

各ステークホルダーに対し、どこまでの権限を与えるのか、です。

権限は大きく3つに区切られます。

  • 示唆の提供まで依頼するのか
  • PMOとして施策ブレイクダウンまでなのか
  • ブレイクダウン後のタスク化を任せるのか(タスク実施も含むのか)

適切に権限を渡せていないと、PMOとして施策ブレイクダウンした際に、実働指揮権限がなければ意味がありません。実行するにあたっては数値を司る人(ナレッジ・ノウハウのある人)をアサインするのがスマートなやり方です。

これも経験則ですが、上記の区切りを明確化・言語化できていない人や企業が多いように感じています。

ポイント4:業務リソースが実際に合致しているか

ここの言語化が要です。金額・単価・実作業量・作業内容が乖離することになるためです。

疎かにすると、例えば「大したことやっていないのにお金だけもらったりする社員」が出てきたり、「業務が一極集中してしまって特定の人にだけ負担がかかる状態」が発生します。

ポイント5:役割を理解して接点を持てているか(他部署・社外も)

業務委託・社外メンバー・他部署のメンバーそれぞれが与えられた権限を理解して依頼と接点を持てているかです。他部署や外部と明確な前提共有ができているか、が重要です。

例えば、「よくわからずにアサインされる他部署(しかもやる気ゼロ)」「業務委託に対してオーバーラップした業務要望をしてしまう」「高度な業務委託であるが使いこなせていない」などが挙げられます。

このような残念な事態が起こるのも、前述の”ステークホルダーの役割と権限の設定とマネジメント”ができていないことに起因します。

プロジェクトの成功はコミュニケーション設計にある

プロジェクトや事業成果は設計側が全てと言っても過言ではありません。プロジェクトマネージャは適切にコミュニケーションを設計することが成果につながります。プロジェクトが上手く進んでいないと感じている場合は、ぜひコミュニケーション・マネジメントを意識したアクションを起こしてみてはいかがでしょうか。

この記事を読んで「そもそも自社のコミュニケーション設計ができていない」という方もいると思います。そのような場合は外部のコンサルティング会社に依頼してみるのもおすすめです。

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Ryoji Takada

Ryoji Takada

座右の銘は質実剛健。PDCAをやり遂げプロジェクト収益化まで愚直にやるのは得意分野。あだ名は夜桜で、昔は格闘技のプロであった時の名残。バイクとファッションと格闘技が好き。

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