オウンドメディアとは企業が自社のメディアを運営し、事例や解説を通じて事業を紹介するマーケティング手法ですが今回はその大枠についてのナレッジ記事となります。
私は、SEO黎明期から様々な業種のオウンドメディアを立ち上げて、さまざまな運用を実施してきました。今回はそのナレッジを言語化、立ち上げから・企画・運用のポイント、よくある失敗例、また事例で具体的にどれくらいの効果が得られるのか解説します。
少し長いですが、SEO業者の専門知識を記載しておりますので、読み込めば実際にメディア立ち上げから運用・実成果を残すまでができるようなコンテンツとなっているかと思います。
Contents
オウンドメディアの定義とは?
はじめにメディア、と言っても多数の種類があります。その中でオウンドメディアがどの属性の施策であるのか? という部分を解説していきます。
メディアには三つの種類がある(トリプルメディア)
このメディアの属性のことを「トリプルメディア」と呼びます。それぞれの特徴を理解し、相互連携を効かせることが重要になります。
1:オウンドメディア(Owned Media)
今回の主題であるオウンドメディアは、外部媒体を活用せず企業が自らで保有するサイトやコンテンツのことを指します。メディアのよくあるパターンとしては以下の様なものが一般的です。複数のコンテンツの種類があります。
- ブログ記事
- ナレッジ記事
- まとめ記事
- 比較検討記事
広義において、オンラインでは「ホームページ」などもオウンドメディアとして呼べますし、「事例」などもオウンドメディアの一つと捉えられます。このオウンドメディア施策を「コンテンツマーケティング」を実施するなどと呼びますが、大体同義の施策と捉えていただければよろしいかと思います。
余談ですが、オフラインでは、「パンフレット」「店頭に置くチラシ」なども自社で保有する資産であるのでオウンドメディアの定義に当てはまります。
2:ペイドメディア( Paid media )
一方、自社で保有せず、外部媒体やプラットフォームに費用を払うものを「ペイドメディア」と言います。ベーシックな施策ですと以下のようなものがあります。
- Google検索広告
- Meta広告
- GDP(Googleディスプレイ広告)
- YDN(Yahooのディスプレイ広告)
- 外部メディア掲載(日経などの大手メディア、各種比較サイトなど)
こちらの施策の特徴としては非常に工数少なく、また払えるコストさえあれば即席で効果が上がるような特性を持ちます。現代では、特にWEB広告の技術進化は凄まじく例え初心者でも広告を簡単に出せ、改善できる様な仕様になっています。
一方、端的に効果が上がるので、こちらを注力するあまりに、上のオウンドメディアでのオーガニック流入(自然検索での流入)比率が全くないという企業も一定数クライアントでは存在し、弊社は施策介入をしています。バランスが大事になります。
3:アーンドメディア( earned media )
もう一つはアーンドメディアです。アーンドメディアの定義とは、SNSのように自分の発信に対し、ユーザーのフォローやリツートなどで構成されるものを指します。よくあるパターンとしては以下のようなものです。
- 口コミサイト( グルメ系など )
- 掲示板( 5ちゃんねるなど )
- SNS各種 ( instagram,X(旧Twitter),Facebook、Tiktokなど )
特徴としては、サイトによって大幅にユーザー層が違うこととバズに代表される様に一気に流入を獲得できる可能性があることが挙げられます。
また、資産的にフォロワーが獲得できるものとそうでないものがあり、フォロワーを獲得できるX,Instagram,Yotubeなどではオウンドメディアに近しい資産性を発揮します。ご存じYoutuber,Instagramerなどはその代表例です。
各メディアの中でのオウンドメディアの立ち位置・重要なポイント
ここで大事になるのが各メディアの特徴です。大幅に成果が出るタイムラインが違います。以下がそれぞれの各メディアの流入設計の一般的な例です。
今回のオウンドメディアは長期的に成果が現れます。つまり資産になり、CTAやCACが続ければ続けるほど下がるのが特徴です。二乗的な曲線、株式の複利と同じ効果を発揮します。
ペイド系は即席で施策ができ最適化も早いですが、結果競合も入札してくるので単価は一定の閾値に落ち着き変動はありません。あとはコストをかけられるか否かの比較的単純な図式です。ペイド系は動線やLPOなどで数割の改善は図れますが、大局的な面で見ると成果は限られます。一気にCPAを下げたい場合はLine誘導などからのCRMなど、テクニカルな施策が必要です。
長期で続けるとオウンドメディアの方が、CPAは他のメディアよりも平均して良くなることが一般的です。上の青い丸、「クリティカルマス」と呼ばれる部分まで耐え忍ぶことがポイントです。
「クリティカルマス」は複利となった評価資産が一気に相乗効果を及ぼし、指数関数的に増える部分を指します。結局は市場にある検索キーワードを取り切ってしまうと、上限に達してしまいますがそれでもペイドよりも圧倒的に効果が良くなります。
よって長期的目線での施策前提となりますので、途中で運用を投げ出さないことが何より大事です。ここの前提知識が経営側にあるか否かで、大幅に成果が別れます。
またBtoC、BtoBで作り方や搭載するべきコンテンツや施策連携が大幅に異なり、目的や作り方によって大幅に波及する成果が変わってきます。上手く作れれば成果は甚大ですが、設計や運用間違えると効果が全く出ない、ということも多いです。
詳しく下で解説していきます。
オウンドメディアのメリット/デメリット
メリット
「今すぐ客」を獲得するのでなく、興味ある「見込み客」との接点を持てることが最大のメリットです。(上の興味・潜在の部分)また作り方によっては比較層も取り込めます。
広告なしで問い合わせを獲得できるために、CPAベースで見れば続ければ続けるほど、どんどん下がっていきます。蓄積されたコンテンツが資産となる為に、効果は一度評価されてしまえば永続しやすいです。(なんとなく作ったコンテンツが、いつの間にか数年後に膨大な流入になることもよくあります)
また、受注ベースで見れば、能動的に検索・認知・比較検討の上問い合わせをする為に、BtoBなどの場合では受注、店舗の場合は来店に至るまでの顧客獲得コスト(CAC)も良好な傾向が多いです。
BtoCの場合は営業や商談がないために、SEO評価・アクセス=商品販売数に繋がりやすく、BtoBよりは難易度が低い印象です。
デメリット
第一に、設計や運用を間違えると全く成果が出ないということが挙げられます。第二に工数が非常にかかります。数年スパンでのプロジェクトでかつ、工数がかかり運営は非常に根気が居ります。
以下がオウンドメディアの工数 vs 成果の例です。
すぐに成果が出るものではないという前提を履き違えて辞めると、当たり前ですが効果は出ません。また、後述する目的やKW設計を間違えてしまうと、上手く作っても効果が微々たるものになります。
一定のナレッジ・テクニック・設計が必要になります。WEB広告ですと、端的に・すばやく・ナレッジがそこまでなくとも実施できる今、前提条件が真逆なのです。
オウンドメディアを実施する意味と目的各種
目的によって大幅にマネタイズポイントが分かれます。代表的なものは以下の3つです。
①自社のプロダクトやサービスの認知、潜在層とのリード接点を作る
まず、ほとんどのパターンは、こちらではないでしょうか。まずはサイト流入を作り、商品購入や問い合わせに至る前段階のユーザーにリーチする為に、SEOにおける潜在的なキーワードを洗い出し、記事やコンテンツを作成する流れです。
こうすることによって認知を得ることができ、また**の使い方やナレッジ、などのホワイトペーパーでゆくゆくは顧客になり得るであろうリードの獲得ができます。また並行してセミナーなどを実施することで継続の接点をとるきっかけのメディアとなることができます。
②比較検討層のみを刈り取りマネタイズする
一方、やり方を変えると比較検討層などのみが集まるメディアに仕上げることも可能です。
例えば有名どころであればTIトレンド、ボクシルなどです。彼らはSEO合わせてプラットフォームかしています。
こちらはシステムを作らずとも、先に比較検討のみに特化した記事を作り、後から「比較検討のサイトに仕上げてしまう」というようなやり方も可能です。実際に、起業LOG様ではその方式で、比較**選記事を多数領域で作り上げ、比較ダウンロード機能を後追いで搭載、企業側に対して、掲載やリード獲得は有料の方式を案内しマネタイズしています。
結果、ボクシルなどの後発ですが、比較メディアとしての頭角を表している、良い事例です。
④純粋な収益事業とする
純粋な収益事業のメディアとなり得ることもあります。例えばアフィリエイトがわかりやすい良い例です。
例えばクレジットカードなどは問い合わせ単価報酬が非常に高久、アフィリエイトでここから申し込みが入れば、サイト運者に対して数万円/件が入ります。(上の参考は「クレジットカード 比較」で上位のかぶたん様)
オウンドメディアバブルの際、先輩はこの部類のサイトひとつで年商数億になりました。そのお金を使って今でもサイト買収を続け、またアクセスを上げ、マネタイズをを繰り返しています。
別のマネタイズの場合は、メディアのアクセスが好調となった場合、有料で広告掲載やリード獲得メルマガをやるという導線や有料でインタビュー記事を載せます、などのマネタイズ手段へ派生させることも可能です。(以下はBizhint様のマネタイズ参考例)
各メディアに完全な特性区切りはないのでハイブリッドで考えるべき
どの領域で、どのようにマネタイズするか?の設計は非常にデザイナブルで自由度が高いです。
例えば、知識ブログなどの中に「このユーザーだけは刈り取りたい」という場合は比較検討の「**選」の起案を散りばめ、かつホワイトペーパーを作り、潜在リードの母数を増やすのは非常に有効です。
サイトが成長してきたらいっそメディア事業に振り切りマネタイズ部分を新設するなど、のハイブリッドも可能です。(中には最初から明確なM&Aやバイアウト目的の方もいます。メディアはM&Aで売りやすいです。)
このように、設計段階にて「何を狙うのか?」で色々な手段に別れますので、事前に知っておくことを推奨します。
オウンドメディアは意味がない? よくあるミスや間違い
「意味がない」という意見もちらほら耳にします。しかしながらよく聞き込んでみると以下のパターンが多かったです。
- そもそも市場KWのニーズボリュームに対してのアプローチを間違えている
- GoogleのSEO評価タイムラインなどの前提を間違えて意思決定している
- 施策連携ポイントが欠落している
それぞれ説明していきます。
1:ニーズ vs ボリュームのアプローチを間違えている
まずよくあるのはニーズ対ボリュームの問題です。例えばとある成果に悩むクライアントで、現場の意見を元に、興味度合いが強いだろうと思って記事を作ってもリサーチしたら月間検索10件程度しかないものを多数作ってしまっていました。
営業が思うこととユーザーのニーズ母数が全く一致せず、いつまで経ってもCVが発生しないなどがありました。結局市場総計が10に対して、作り込んだとしても、流入MAXが10です。付随する共記語は少数。
なので「営業脳」だけでなく「市場ベースで起案・考える脳」が必要です。
但し市場のキーワードリサーチ以外で、意見の中に実は莫大なニーズ総数があるKWも含んでいることがあります。なので定性的な意見は常に聞いておくことはおすすめです。
なので営業側とも仲良くしておきましょう。また、双方の思考軸を持ち仮説検証しましょう。
2:GoogleなどのSEO評価タイムラインなどの前提を間違えている
次にこちら、代表的なものとしてはCVを6ヶ月後に数十件獲得できなかったからすぐ辞める判断、などです。先ほどの再掲となりますが、途中で諦めてしまうパターンですね。図にすると以下のようなイメージです。
まずリサーチ・方針・市場分析・運用を定めるのに1ヶ月〜2ヶ月は必要、そこから先に作成・アップが1ヶ月、その後に未着手からのGoogle評価は数ヶ月必要です。6ヶ月後くらいからUU向上などの数値成果がやっと波及し始め、花開くのは総じて2〜3年程度かかる継続すべき施策です。
予算を大量に注ぎ込めば半年や一年で成果も出ますが、ほとんどの場合は稀です。
経営側がその知識が根底になく、BIGなキーワードがSEOが評価され上位表示される手前(クリティカルマスのポイントの至極手前)にサイト運用自体の取りやめ、というのは実経験として幾つか経験しています。それも、一回でなく、複数回。
例えばうち一つは、CXという、超ビックキーワードで7〜8位に来ていたのに、メディアの撤廃判断を下してしまった事例があります。理由は正しい正しくないというより「人ややり方、全部とりあえず変えてみようよ、なんか変わるかもしれないし」という社長の鶴の一言でした。
クライアント社内はその後、全方面ヒッチャカメッチャカだったそうです。流入の数値はオーガニック流入がほとんどだったのですが、5分の1程度まで落ち込んでしまいました。(重要性を痛感したのか、結局が案件を切られるも数年経った後、また舞い戻ってきました)
経営側が知識を保持することはとても大事です。クリティカルマス直前に辞めてしまうパターンは非常に勿体無い典型です。
ロジックとしては、CTRは3位以上から一気に伸びます。(以下がそのレートです)
そも、50位などにも入らなければ見込み薄、撤廃判断で良いですが、超ビックKWで8位であれば記事を多少テコ入れすれば十分に届く可能性があります。
株式で考えればイメージしやすいかと思いますが、このケースはタイやベトナム、インドなどの爆上がりする有望株を手放すに等しいので、前提タイムラインの知識は非常に大事になります。
3:施策連携ポイントが欠落している
最後によくあるのは「PVやUU上がったが、CV全くしない問題」です。成果が上がったら大体この問題に当たります。特にBtoB事業です。
施策連携ポイントとしては、例えばBtoB事業においてBIG キーワードなどの「** とは」などの抽象的な記事で潜在層のアクセスを獲得して、いきなりBtoBの自社サービス紹介する導線を引いている、などです。
BtoBの場合は、興味あるホワイトペーパーやビジネスで活用できるテンプレートを同時に作成して記事に配置、などが必要ですし、関連するオフラインイベントなどのライトな接点の新設が必要です。更に、メルマガなのかコミュニティなのかのライトにつながる場所もあったら好ましいです。
このように、受注までの角度を上げるのに成功したい場合は、メディアに留まらないテクニカルな設計が必要になりますし、非常に根気が必要です。
これを動き出すと最早、The Model的に動かないといけなくなってきます。なので私の会社、マーケティング会社なのに、気づけば営業稼働・リード獲得後のSFA設計・MAシーケンス設計・広報稼働も役務受注してしまう、的なことが稀にあります。
2024年現在ではただ書く、ただCTA配置してCVRを上げるためABテスト、だとあまり意味がありません。CVを促すためのABテストは役務上、数百回繰り返したと思います。
その結果を端的にお伝えすると、ユーザー興味に対して発案コンテンツや導線が乖離している時点で、あまり効果は得られません。
本来的には、セミナーもオフラインイベントも、メールも、Facebookコミュニティも、ホワイトペーパーやPRも、全て絡めて考え相互導線と連携を取るのが良いのです。成果を逆算するとですね。
ちなみにBtoCは営業という存在がないので、圧倒的に楽、そのまま購入に直結しやすいです。
まとめ
以下が要点で、成果を出す道のりまでに大事になります。
- アプローチしたいニーズに対して、市場の母数頭と定性的な頭を両立して考える
- SEO評価などのタイムラインをご自身が理解、また経営側へのロジック伝達と理解合意(≒その期間の予算を取る)
- 顧客興味に対しての、導線、施策連携を綿密にする
オウンドメディアの始め方・進行の仕方
ベーシックな進行手順の説明に入ります。失敗しない為に以下の流れを遵守することがスマートです。具体的なタイムラインとしてはこの様なWBSにすることが大事です。
大体1ヶ月リサーチ方針極め、2ヶ月目に体制設計、3ヶ月目以降から実施、モニタリング体制作り継続運用を回すようなイメージです。
Step1:ペルソナの言語化・競合KWリサーチ
まず初めにユーザーの言語化・競合のリサーチから始めましょう。ここが最初の起点です。非常に抽象的なのですが、今後の質やKWの狙いに大きく響いてきます。
上はしっかり作ってあるものの例です。こちらは弊社作成ではないのですが、そも事前にリサーチ専門が会社が定量データで行動デバイスなどの実像データを元に作ってくれてました。
モザイクですが、左がペルソナ、右がカスタマージャーニーです。そちらを活用させていただき、要件定義とコンセプトワークありがたく生かしました。
toCなら興味・行動・認識デバイスやチャネルを事細かく、toBなら置かれてる役職、状況、実際にどのような業務ケースなど洗い出しましょう。
なぜやるか?
大きく二つの理由に分かれます。
一つは下のStep2・3・4に内容が波及します。SEOをするKWの設計に大きく関わるからです。市場リサーチの際の発案のきっかけになりますし、サイトのコンセプトやトピッククラスターと呼ばれるものを設計にも波及してきます。後述を読み込んでいただければ理解しやすいと思います。
もう一つはユーザーのペルソナを言語化しておかないと、外部のライターに外注した場合、もしくは社内でも他の人にお送りした場合、コンテンツがそもそも対象と違う、意図にそぐわないといったことが発生しやすいです。
よって上のような本格的なものでなく、簡素でも良いので、事前に言語化して定めておくことをお勧めします。余談ですがここのペルソナが意外と定まってない企業様も多いので、これを機会に共通認識にすると喜ばれたりもします。
喜ぶのは主に経営レイヤーです。なので部長の方はこちらのスキルあると喜ばれます。
ユーザーの言語化のポイント
ユーザーを言語化するにあたり重要なポイントとしては、対象は誰で、どういった要望があり課題に思っているのは何か?です。さも当たり前の様に聞こえますが、意外と言語化できていないクライアント様は多くいらっしゃいます。
BtoCの場合には対象や年齢、前提である条件、興味関心について詳細にブレイクダウンすることがお勧めです。BtoBの場合ですと置かれた状態で悩みも違うでしょうから役職ごとのニーズの違い、また業界・業種などの共通項、業務ケースは記載しておくことがお勧めです。
特に双方ともにやらざるを得ない「行動ベース」や「業務ケース」はSEOのキーワードに往々に派生するので、しっかり言語化しておきましょう。どうやってリサーチに派生させるかはStep3を参照のこと。
営業が一番知ってますのでヒアリングするのもまた良しです。
競合リサーチのポイント
メディアとなる競合はこの段階で5〜6個洗い出しておくことがお勧めです。
定性面では、ヒューステリック分析に留める(サイトのコンテンツ搭載内容や傾向)の分析をし、競合コンテンツ一式を洗い出しましょう。
プロでも、プロフェッショナルでない方でも、何かしらに競合サイトとその配下のディレクトリの整理、コンテンツの大枠やディレクトリ傾向・ページ群を把握してリンクなど添付しておきましょう。大体競合ディレクトリのレベル3くらいまでを把握すれば十分です。(以下ヒューステリック分析、ちょうど実行中のもの)
もしSEOのプロフェッショナルであれば、合わせて定量面は一気に洗い出しましょう。洗い出すのは、競合一式の流入しているKW群のSEO順位 vs ページURLです。SEOのリサーチツールを用いればKW自体の可視化工数は比較的少なく済みます。
ただし、その後の整理やフィルタリング、個別最適な人的タグ付けは地獄ですが頑張りましょう。以下は例。特定の絞るべき着目領域、共通項、除外すべきものがあるはずなので炙り出し、ドロップダウンでの記載が有効です。(ここはまだAIが無理な部分です)
これで市場における国内競合の流入クエリは大体抑えられます。5000〜6000くらいのクエリが把握できて明確なサイトごとの傾向、どこが、何が強いか? が掴めます。
ここが以後の本格的に運用を回す場合、後が一気に楽になります。1〜2年分の着手KWこの時点で設計できる為です。この辺り、粒度差異あれどSEO代理店の中堅や大手は初期分析で一気にやってしまうことが多いです。
Step2:ユーザー興味KWのリサーチ
ここから競合とは離れ、ユーザー興味KWの抽出に入りましょう。1のペルソナが生きてきます。
ユーザーの興味KW抽出のコツ
競合でなくユーザーの興味ということがポイントです。競合では大体がすでに思いつくクエリは網羅されているパターンが多いですが、それ以外にも仮説ベースで洗い出せる場合が一定数存在します。
ほとんどの場合にはツールの略称などの共記語やサジェストはほとんど抑えられています。例えばビジネスチャット・SFA・CRM・MA系各種などは競合雑多なので分かりやすいと思います。以下の小さい丸は市場における主力ツールの競合にほぼ抑えていると考えた方が無難です。
しかしながら、ペルソナの想定される「行動パターン」や「業務で実施すること」を洗い出して、全部SEOのサジェストツールで検索すると、意外と競合がヒットしない、そもそも対策していない、というパターンがいくつかあります。
ここが意外と多いのです。例えばSFAだと、共記語ベースでコンテンツを考えてるメディアが多いですが、実は営業の方は資料作成や上長や経営へのレポート悩んでたりとかしますから。そういったKW逆算して、記事をアップしているか?というと意外とそうでないのです。
一旦定性脳で考えて、また別の着地点から定量リサーチすると、発見は多いです。これが先ほど述べたペルソナを作るメリットです。
ツールは何を使うか?
もし無料ツールのみで行きたい場合はラッコキーワードでそのKW一式を洗い出しましょう。多くの人が大体こちら使ってると言っても過言ではないのでは。自分も有料ツール導入するまで大体こちらでした。 もう12~3年くらいリリースして経ちます。時は早い。お世話になりました。
こちらは、入力対象のキーワードに対するサジェストを、一気に洗い出してくれます。競合の順位網羅などは有料ツールでしか見ることができないので適量、目視検索とメモ推奨です。
一方、プロフェッショナルである方はミエルカ・キーワードマップ・パスカルなどのSEOリサーチツールを用いましょう。サジェスト一式の競合順位も簡単にわかりますし、Step3につながるトピッククラスター的な可視化も同時にしてくれる、かつデータエクスポートもできるので、大幅な時短となります。
以下動画は例です。クラスタ連携出すだけでなくそのまま、記事ライティング即行ける仕様書も吐き出せます。(早送りして後半閲覧推奨)
パスカルは実務で使えて、速度が早く、UI簡素で、おまけに安いので、結局長年使っててこれになりました。現場上がりの人が作ったツールです。よって共感できる機能が多いです。
多くのツールは年契約して業務で使ったことあるのですが、高機能すぎる反面、使う機能ごくごく一部なのです。高い系はレポート機能は優れているのですが。実務ベースだとパスカルに一票です。同額のTact SEOさんには申し訳ないのですが、リサーチの時間が長いのですよね。業務が途切れ途切れになってしまうので。
もしその筋の受託業をやっている場合は、ここに社員やアルバイトの稼働をさせると時間コストがえぐいことになりますので、結論はツール導入が一番コスパが良くなります。
Step3:サイトコンセプト設定
さてここまでで、「競合」および「ユーザー」のKWが網羅できました。ここまでくれば、あとは自ずと答えが決まってきます。ここでどこを狙うかというサイト大枠の方針を決めましょう。
Step1で洗い出したペルソナ、およびStep2で洗い出した競合、Step3で洗い出したユーザーの検索KWそれぞれを統合することで大体の答えが見えてきます。
それはすでに一定の興味を持つ人を狙ってもいけるか? もしくは潜在的な他の部分から認知をとるべきか? が判るからです。
顕在・興味層に軸を切れる例(すでに一定のKWボリュームがある場合)
例えば上の例の競合のうちのCRMを一例に捉えると、すでに数万検索あるビックなSEOワードです。この場合はすでに一定の興味がすでにあるユーザーを捉えることができます。以下リサーチ例です。
すでに膨大な小さい丸がありますよね。なのでこの丸のCRMに転換できそうな、興味層の特定の領域ごとに狙えます。
この範疇領域で、業務に役だつダウンロードコンテンツや記事をメディアで搭載するのか? というコンセプトでのみでも一定のユーザーエンゲージはいけます。
例えば、一例ではモロに比較検討層狙い、他のツールからのリプレイスコンテンツなどをZOHO様では実施していらっしゃいます。SFA&CRM&MA機能を包括しかつ安いHubspot様は、お役立ち資料を膨大な数量作成、かつかなり質が高いものが複数個あります。
潜在ユーザーのみのメディアに舵を切らなければいけない例(まだ市場認知自体が浸透していない場合)
一方、例えばビジネスチャットは、総計のGoogle検索数が月間2400程度しかありません。
このように、ベンチャー立ち上げ当初の事業などは、同様にそもそも検索するワードの母数がほとんどない、ということも多いです。(ビジネスチャットはIT系では当たり前でもKWの検索市場的には全然少ない意外な結果です)
その場合にはどうなるかというと、もっと遠い層、潜在ユーザーに対して認知とアプローチを取り、転換を図らなければいけません。至極、長期的な視野の施策が必要です。
なので一例で、ジャパニーズビジネスチャットでグローバルな展開にも成功しているチャットワーク様では日本語の用法などの、文書に関わる話題をコンテンツで搭載しています。(以下は簡単に解析した例)
策定方針が、面白いですよね。文書に関わる層、興味のさらに前段階の潜在も潜在である層を狙っています。
以上のように、興味層を取るか、潜在層を取るか? 的な派生に分かれます。
一方、やり方によっては真逆の、比較検討層のみをただひたすらに取るメディアに展開する、ということも可能です。
これらのように、非常にデザイナブルな領域で、個人の見解は人それぞれであり、正解がありません。
こちらは自社事業に対してユーザーニーズ・競合が見えて精緻に策定が可能なのであって、仮説ベースでやると大体失敗するので注意しましょう。 なので、リサーチはとても大事です。端折らずやりましょう。
Step4:トピッククラスターの設計・成果シュミレーション
ここからさらに具体化に走ります。上のサイトコンセプトが決まったら、暫定でも良いので、そこから先のコンテンツ設計を先に実施しましょう。このコンテンツをトピッククラスターと呼びます。
トピッククラスターとは
クラスターとはコロナ禍でもよく呼ばれましたが「一つの塊やグループ」のことを指します。主にピラーコンテンツ(メイントピック)とクラスターコンテンツ(サブトピック)で構成されます。
(簡単なイメージです。本当はもっと細分化して設計します)
コンテンツ同士を内部リンクで繋ぐことで、グループごとのGoogleのSEO評価を高め、ユーザーの可読性やエンゲージメントを上げる戦略です。
トピッククラスター化をなぜ実施するか?
以下の理由が挙げられます。
- リサーチで見えた共記語をそのまま書くと、カニバリゼーションが生まれ、ユーザービリティが大幅に損なわれる
- 初期設計なし、五月雨にやると以後の記事起案が辛い、かつ更新ができなくなる。
- Google評価的に2024年現在では成果も出づらい
一昔前のSEOは1共記語で1記事書いてしまうという大量生産が当たり前でした。オウンドメディアバブルの際には競合コンテンツがなかったりもしたので、とりあえず書けば上がりました。しかし今はそのようなことは少ないです。(上がることもありますが、整理や網羅した記事にいつの日か抜かれます)
例えば上で言えば「成功事例」「具体例」を見てみましょう。この二つ、語句自体は違いますが、意味は一緒ですよね。事前整理しておかないと2つ記事を作ってしまう流れになります。
これの設計を飛ばして進行すると、以後の企画や運用チェックがかなり辛いです。内部リンクをどの記事でどこに飛ばすか?など、散らかって管理できなくなります。
また、整理がない為「結局作ったら同じような記事」「書かなくて良い記事作っちゃった」というのは、運用でやってしまうあるあるです。なので何かしらで事前に整理するのがエコです。
前途の通り、Step2〜3にて洗い出したKWに対して、これができれば1〜2年分程度の記事更新物は事前に設計ができます。またその洗い出したものを管理表とできるので、後の更新が非常に楽になります。
整理はどのようなツールを使うか?
MiroやFigmaなどの無料で使えるホワイトボードツールとGoogleスプレットシート併用推奨です。
まずスプレットシートだと絵図で理解ができませんので、Miroなどで矢印で可視化しないと全体整理自体が厳しくあります。
その後にクラスターや検索数をGoogleスプレットシートなどでまとめ、何がピラーで何がトピックなのかを明確化、かつ検索数などメモ、右側に着手すべき方針などもメモれるようにしておきましょう。(以下はピラーフラグがまだない頃の管理表です。ここにピラーとトピックを追加するイメージ)
このシートが以後の記事の着手大枠の管理シートになります。
導入ツールの注意点
今後複数人が介入するためファイルが分たれ、ダウンロードなどをしないといけないMicrosoft系の活用はやめましょう。(パワポやエクセルを指します)
Microsoft系のツールを使う企業は、以後介入する人員にかなりの負荷がかかり、「バージョンが昔のファイルを更新しちゃった」という「あるある」が現場ではよく発生するので良いことがありません。クライアントが修正前のファイルを見て「修正されてないじゃないか!」とこちらマターでないのに怒られることもあります。(会社員の際から10年以上やっている中で、何回かありました)
要はほとんどの場合、最新バージョンだけあればいいのです。導入すべきツール、必須条件は以下です。
- オンラインで共有が効き、UI&UX優れるもの
- URLは一箇所、そこを見れば最新版が常に更新されるもの
- 全員でそこを編集できる
弊社の場合には度重なる試行錯誤の結果、MiroおよびGoogleスプレットシート併用体制です。
ホワイトボードツールにおいては双璧で認知度あるFigmaのFigjamもUX良しですので、どちらでもOKかと思います。表計算系は基本、現場的にはスプレットシート一択です。オンラインでシェアできるMicrosoft365も操作性・共有性が微妙で、操作負荷が高いですので非推奨。
成果のシュミレーションについて
経営側が気になることはほぼ、ここです。ここまで設計できてしまえば、競合およびユーザーのキーワードクエリが判明しているので、とある計算をすると、大体の成果予測が先んじて可能です。
キーとなる数値は二つあり、一つはKWの順位に対するCTR(Goole検索のクリックレート)です。
二つ目はCVRです。これはコンテンツ特性により大幅に変わりますが、オウンドメディアの抽象的なKWを羅列して更新する場合は0.02%や0.025%などかなり低くなります。その代わり10万UUを超える流入は継続すれば難しくなく獲得できるので、たとえCVR低くてもリードが定期的に送付されます。
KPIとなる数値は、着手記事に対して、うまくcountifsなどで抽出し作り上げると、上のような想定数値の成果が出てきます。なお、記事をUPして即SEO一位になることはまずないので、Google評価のタイムラインをきちんと計算で加味するようにしましょう。
が、非常に専門的なので、小記事を更新し、管理表をダウンロードコンテンツとしたらここにリンクを貼ろうと思います。しばしお待ちください。
Step5:体制図(役割)・運用ターム・レギュレーションなどの策定
さらに具体に落としていきましょう。次はこれら各種を作りましょう。
役割はなぜ策定するか?
事前に稼働者のリソースを抑え、円滑に進行する為です。メディア運用はほとんどの場合複数人が分たれます。(以下は一例)
役割について、この際に誰が何をやるという明確な区切りをつけておかないと、あとの運用が散らかります。
校正やアップする人など具体の作業領域であれば明確に区切りができるのですが、問題は企画・起案などディレクターもしくはクリエイターの権限・役割の線引きです。特に抽象から具体に落とす企画。
ここが誰が何をやるか?の粒度まで落とす必要があります。またクリエイターとなる人のレベルによっては「ディレクターがやってしまった方が早い」ということもありますので、運用しながら役割閾値の変更なども必要になっていきます。
運用のタームはなぜ策定するか?
複数人共同プロジェクトになりますので、各担当の時間を、事前に抑える必要があります。なので事前にこういったWBSを作るとあとの運用がスマートです。
作ることで事前にご担当様各位の事前のマインドシェアを抑えることができ、スケジュール順守することが可能です。一方作らないと各担当で「*日遅れます。すみません。」ということが複数発生し、その積でコンテンツが2週間〜1ヶ月程度遅延する、などはよくあります。
また、現実には修正タームを必要とすることがほとんどですが、そこを加味して事前設計しておらず「全然進んでないじゃないか」と経営側が怒るということもよくあります。経営層は結果だけ見ればOKではありますが現場としては綿密に業務リソースをコントロールせねばなりません。
よって、こういったものがあるとスマートに進みます。
言語化すべき前提やレギュレーションについて
次に逆算して作るべきものはレギュレーションです。レギュレーションとは言い換えればルールです。一式、洗いざらい言語化しましょう。また運用中にこれはルール化すべきであるというものがあれば随時言語化していきましょう。(以下は例)
繰り返しますが、複数人共同で動き、場合によっては外部人材も加味して進行します。その際に「自分だけが理解している」という状況や「ルール未策定」だと、修正やメッセージ工数の方が高くつきます。
レギュレーションには運用で必要になる細かいルールを追加しましょう。このルールは納品のルール・文体ルール、動線配置ルール、URLリンク記述のルールなど「虫の目」となり、なるべく詳細に記述するのがコツです。この前提やルールを作っておかないと、例えば以下の様なことになります。
- 修正工数が爆上がりする
- ライター様のローカルPCで画像が作られ、画像の誤植1文字変えたいけど編集できない
- メッセージするも、稼働とっていただくまで*日かかりアップが遅れる
な作らない場合、非常に非生産的になりますので、ゆくゆくどうやっても必要になるといっても過言ではありません。また運用中に多々想定してなかった指定事項が出てくるので、随時アップデートが必要です。
さて、ここまでできたら外部・内部問わず運用体制はほぼ確立できた流れとなります。
Step6:編集者、ライターなど人材確保
次に、実際の業務リソースの策定に移りましょう。この業務リソースの策定においては内部を使うか?外部を使うか? という2つの選択肢があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため以下に記述します。
内部で実施するメリット・デメリット
- メリット
- 粒度高い更新ができる
- EEATが担保しやすい
- EEATとは「Experience(経験)」「Expertise(専門性)」「Authoritativeness(権威性)」「Trustworthiness(信頼性)」の略
- Googleの検索品質評価ガイドラインで定義されているウェブサイトの評価基準
- つまりはどこの誰が発言しているか? もGoogleは見ている
- デメリット
- 業務稼働が取れない( ほとんどの場合には専任でなく、マルチタスクで差配されるので、かなりの気合いが必要 )
- コンテンツ更新総量が限られる
デメリットにフォーカスしましょう。こだわりすぎて結果、質 vs 数量でUU向上やCV総数が外注した方が成果が出ることが往々にしてあります。内製の場合には具体的なリソースに対して、実益がどうなのか? も同時に加味し検討しましょう。
外部で実施する場合のメリット・デメリット
- メリット
- コスト低く・総量を担保しやすい
- 上の言語化諸々がうまくいっていれば質も一定は担保できる
- ペルソナ・競合・トピッククラスタ・役割の区切り・ターム・レギュレーションなど
- デメリット
- どこまで行っても意図や思考の一致までは難しい
- 一定の質を担保するためには上のStep1〜5までを綿密に策定が必要である。
こちらは「思考」の一致にフォーカスしましょう。たとえ外部のプロを招いたとしても彼らはライターやSEOのプロです。あなたの事業そのものを熟知しているわけではありませんし、事業責任者の様な経験がある方でもありません。「思考」は十人十色。そこからの構成は非常にデザイナブルです。
求めすぎると、結論としては修正を流すよりその時間で自分でリライトした方が早くなり、コストも嵩張ります。
外部内部で実施する区分けと判断基準は?
運用側としては「定性度の閾値の見極め」が必要です。
一例ではライターに10万払ってもライター側が離脱してしまう、という案件もあります。自分で20分程度リライトすれば、その連携やメッセージするはずの時間で済むはずなのですが、「お金を払っているのだから、お前がやれ」と押し込みすぎて損しているパターンですね。
ところが抜群な実績を誇る業者でも、どのようなプロでも「思考」までの一致は厳しいのです。閾値をオーバラップせず相手の見解尊重が一定大事です。(あまりにも、な場合には解約した方が良いパターンもありますが)
うまくやれば、業者に頼む場合は原価3〜5万程度/記事で済み、個々人に依頼する場合は1万〜1.5万程度で済みます。(その代わり校正やアップなどは社内ですが)どちらにせよ、コンテンツは一定の総数の運用を担保できているはずです。
押し込みすぎを図る発生事象は、業者やライターの離脱です。彼らもプロですのでビジネスにならない部分は自ずと離脱していきます。業者の場合には本音は伝えず「会社としてオウンドメディアの受託しない方針・事業閉鎖になりました」などと伝え、当たり障りなくフェードアウトします。
その場合にはStep5に立ち戻り、役務・体制・レギュレーションの練り直しをする必要があります。結局運用が回りませんので、実益を取りましょう。
結果的にどのような体制になることが多いか?
結論から言えば、ハイブリッドです。抱え込みすぎ、押し込みすぎはどちらも悪です。
社内だけで回してコンテンツが全く更新されず疲弊するクライアントを多く見ています。一方、定性要望を外部に押し込んで、修正タイムラグだけかかり、結局更新されないという真逆のクライアントの事象も見ます。
ここで大事になるのが上の役務の区分け、定性度合いの閾値の決定です。
例えば、骨子企画時なら、レギュレーションやコンテンツ方針などはディレクター側で策定し、一時起案だけは外部でしていただき、進行前の骨子ファイナライズはまた社内、などが結論一番エコです。
骨子確定後のライティングも同じく。骨子をもとにライティング展開いただき、そのファイナライズは社内でやるのが早いです。
そしてそのチェックバック結果と修正結果を共有、長期的にライターとやりとりしているとだんだん定性的な部分も咀嚼してくれる様になります。工数も半年程度続けると少なくなります。
2024年現在では少数精鋭になりやすい(否、大量生産)
一昔前は、大量にライターを雇い、大量に欠かせ、大量にアップする、というオペレーションが当たり前でした。(後述事例のDeNA様メディア)
相手の立場に立たない運営側の場合、多くの場合は大体ライター側から離脱していくので、結局運営が回りません。ちなみに外部を上手に使いこなせないプロジェクトマネージメント者の場合、不思議と社員自体も離脱する傾向が多い印象です。そう言ったプロジェクトオーナー様、ベンダーだけでなく不思議と社員も飛ばすんです。
つまり、ここは運営側の手腕・フェアであるスタンスが問われます。
弊社はもともとSEOベンダーから始まり、現在では施策立案側や体制構築側に回ってきましたが、近年はどんどん外部・内部との垣根がなくなっている印象です。実際に社員登用を要望される事象も発生しています。
Step7:コンテンツ企画・制作・アップ
ここまできたらあとは難しくありません。頼み、依頼し、ターム通りにチェックバックして、進行し、アップするだけです。段取り八割、腕二割。
ただしこちらも仕組み的が必要です。注意点を一つだけ記述します。
全員でステータス管理できる共有の管理表を作ろう
ここでも共有体制を取らず、効率的な進め方をできないと大幅に工数を浪費します。
よって、Step5で作ったタームを元に、右側に作業スキームとステータス、期日を具現化して管理、皆で書き込めるものを作りましょう。
ツールは先ほど同じく、Googleスプレットシート推奨です。スラックやチャットワークなどで、必ず上部や右側にピン留めないしはブクマしましょう。間違ってもファイル分かたれたりする形式で進行しない様にしましょう。地獄絵図になります。
こうしないと月間で目安10記事以上の記事更新の際は管理自体ができなくなります。よってこの管理表もほぼ必須の一つです。これができれは運用は回り、アップが開始されます。
Step8:効果測定、PDCA 、リライトやCTA配置改変などの継続実施
そして運用後にも仕組みを作る必要があります。予算を使って記事を書いているのですから、当然結果が問われます。成果の棚卸しでほぼ必須になる仕組み、3点セットを記述します。これらはSEOコンサルや業者が定例で提出するものの代用です。
1:数値が時系列でどうなっているのかの管理表を作ろう
まずは数値の管理表です。オウンドメディアの場合はUUとCV、CVR程度は最低でも項目は作りましょう。流入指標で相関性が一番高いのは経験則UUですのでPVよりそちらがおすすめです。(UU×Sessionの結果がPVですので、要因分解すると先にくるのはUUの為です。
簡単な場合は、以下の粒度で問題ありません。
高度にやりたい場合はもう少し細分化しましょう。PVや、エンゲージメント、UU/セッション、リピーターなど見ると、こういった場合はCVする、でもこういった場合はしない、などの示唆が出せます。
ポイントは横軸を「時間」にして一つのシートにすることです。時系列で上がっているか?下がっているのか? が1枚にしないとわからないのですよね。それがないと判断ができない為です。
ちなみにクエリ順位も同じくです。以下はスプシで頑張った例です。弊社では、超BIG KWである「DX」をどうしても一位をとりたくて観測して、粘り強く達成した例です。
ここまでを求める場合にはSEOツールを導入してしまった方が良かったりします。
なお、ほとんどの場合、経営側はここの数値各種しか見ていないですのでかなり重要です。
2:GA4のページに対するCVのカスタムレポート
次にどのページが成果を発揮しているのか、まで辿る必要があります。これを可視化する場合はGA4のカスタムレポートにて、ランディングページに対し、キーイベントでのコンバージョンが幾つになったか? を観測するものを作るとベターです。
できたらCVに至ったクエリ一覧も同様にGAのカスタムレポートで可視化しましょう。
こちらを実施することで、流入はあるがCVが発生していないページ、具体ページの特定とインパクト高い改善が可能になります。例えば上の画像、上位2記事は週次で莫大なユーザーが流入しているのに、全くCVが発生してないですよね。即施策介入どころです。
こうすることで現時点の成果ページ、クエリの把握、そうでないページには、クエリにはどのような動線を設置すれば良いか? もしくはオフラインイベントを企画すべきか? ダウンロードコンテンツを新設すべきか? などの、定量値を元に、定性要因も加味しながら施策起案に反映することができます。
3:着手キーワードクエリ vs 評価ページの順位
次にクエリに対するページ評価も一式見れたら見ましょう。ここを観測した場合には業者用ツールが便利です。前途のミエルカ・キーワードマップ・パスカルなど。
高価なツールだと自社に対して競合のクエリ順位もリアルタイムに観測してくれるので、非常に楽になります。(ミエルカとキーワードマップはその機能があります)
しかしながら、企業的に有料ツールを導入できない場合もあると思いますので、その場合にはサーチコンソールのデータを吐き出し、VlookUPを、Googleスプレットシートで、辛いですが頑張りましょう。その場合は月に一回くらいの棚卸しで十分かと思います。
4:ヒートマップの導入
ここにヒートマップなどを組み合わせればさらに改善粒度は上がります。上の2〜3で洗い出したページに対してなぜCVがないのか? を可視化し原因を特定しやすいです。以下は例の動画。
レコーディングでは、マウスの移動形跡、クリックした場所やスクロールクリックしますがクリックした場所でリンクがなかったりなど、色々ボトルネックが特定できます。(主にLPOなどの方が有効ですが、オウンドでも使えると言えば使えます)
やりようによってはCVに至ったユーザーだけ絞り込みレコーディングを見れたりします。大体CVに至るユーザーは30〜40クリックくらいする方も多いので、改善の気づきは多いです。
LP自体の改変とは違い、ヒートマップはなくても可能だったりしますのであくまで補足までに。導入しなくても大体は検討がつくのですが、もし可能なら導入しましょう。
2024年現時点、無料で一番機能性が高いのはMicrosoftのClalityです。上の動画もそちらを活用。
ヒートマップのページ改善・ボトルネック特定の使い方やツール一覧に関してはこちらのブログで更新してありますので、もし使う場合には参考にしてください。
重要なポイント - 資料作成は最低限
以上4つで大体の改善環境は出来上がります。
SEOコンサルの方々は資料に落としますが、インハウス体制の場合は資料化は最低限推奨です。プロでなくても上の環境さえ作れば、把握は可能です。
定期手動更新は上の1:管理表のみとし、週に一回程度は2:GAカスタムレポートと3:のキーワード vs 評価順位を観測することで、大体は与実に対して改善を企てることが可能です。余裕があれば4:ヒートマップを見るイメージです。
これで一連の流れは完成、運用が回り、数年後に向けた愚直なPDCAの始まりです。
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オウンドメディアの事例と施策における具体的効果について
ここで果たしてどれくらいの成果がでるのか?という部分も同時に記述しておきます。以下が特筆すべき成果を残した例です。
Hubspot様の例(Hubspotブログ)
Hubspot様について
SFA・CRM・MAを縫合したツールのグローバル展開をしている企業です。SalesforceのSLG(セールスが売り込む)戦略でなく、PLG(プロダクトレッドグロース、最初は無料、機能を開放することで有料化)戦略を用いたSaasです。つまりUI・UXに優れます。高度な知識が必要になる領域で特異な存在です。
具体的展開
そのHubspot様非常にコンテンツマーケに力を入れています。クエリはたとえばExcelなどでも上位ですし、マーケティング用語やMAに関わるサジェストを網羅しています。
特筆すべきはこのお役立ちコンテンツの膨大さ。
- ペルソナ作成ツール(WEBウール)
- マーケティングプランジェネレータ(WEBツール)
- 無料のビジネステンプレート(数十個)
- ソフトウェア製品比較表
製品比較表はBtoBの場合にはDLCとしてよくありますが、DLCだけでなくWEBで使えるツールも実装しています。上の無料ビジネステンプレートは非常に質が高く、私の前職でもVCに対しての事業計画報告では上の資料の一つを活用してました。
相当の力の入れ様です。BtoBの場合はお役立ちコンテンツのロールモデルとしておすすめです。
数値成果
現状のトラフィックは600K(60万)程度、ツール自体のUI・UXや価格的差別化要素が明確である為、認知を取りさえすれば比較検討で頭角の選定候補となり、有効リードとなります。
その数は相当数と想定。確実にオウンドメディアが貢献している一例です。
Bizhintの例
Bizhint様について
こちらは現在、スマートキャンプ社の子会社ですが、元々は実は株式会社ビズリーチ(Visionalグループ)の新規事業であり、実績残した後、バイアウトされたという経緯があります。その経緯を知るものはもはや少数派ではないでしょうか。
私はこの立ち上げ期に携わりました。元々は該当新規事業の潜在顧客獲得メディアでしたが、そのメディア運営がうまく行きました。その後メディアのみで法人を立ち上げ、バイアウトしたパターンです。
前途に記述した収益やメディア設計を途中から変更したパターンですね。稀有な例です。
施策展開について
最初は施策カテゴリは複数個あり、SEOやインタビューなどを、並行して上げていきました。SEOでいくつも1位はありましたが、それ以上に経営側に聞くインタビューなどは好評だった様です。今でも該当のヘッダーにあるものがそれに当たります。
また膨大なリード・アクセスを稼ぎ始めた後、そのリードに対しての獲得や集客のマネタイズも実装、某新規事業の潜在層獲得をする方針ではなく、メディア事業単体で収益化を図るようなピポット判断を下しました。
私は設計段階、当時のビズリーチ内の方々とレギュレーションを一緒に組み上げたのですが、非常に相互連携スムーズで皆様優秀、私の中では至極うまく行った事例でした。
具体的成果
SEOは複数個上位、潜在リードは多数を獲得。莫大な会員数。また上の通りのマネタイズでメディア単体で収益化を成し遂げた良い例です。
まず一定メディアがグロースをした後に、2021年Visionalグループから分離され株式会社BizHintを分社化しました。その2年後2023年、バイアウトされBOXILを運営するスマートキャンプ社の子会社になりましたました。
Visionalグループの本業としてはご存知の通り人材プラットフォーム「Bizreach」および採用における人材管理ツール「Harmos」。運用工数 vs 企業収益的な部分とスマートキャンプ側のシナジーあり、バイアウト判断したのだと推察します。
チャットワーク様(のお役立ちコラム)
チャットワーク様はベーシックななお役立ちコラム、ブログ的コンテンツを搭載しています。ベーシックな運用ながら、かなりのコンテンツ数を毎月更新しています。かなりのアクセス、認知を誇ります。
施策展開について
再掲とはなりますが、日本語の用法などの、文書に関わる話題をコンテンツで搭載しています。
「恐れ入ります 意味」や「お体 ご自愛ください」など、文書の用法に関わる記事が多いです。興味のさらに前段階の潜在も潜在である層からの長期的な転換を視野に入れているものと推察します。
具体的成果
該当ディレクトリ配下は、トラフィックが1.4M(140万)前後と、莫大なアクセスを誇ります。一方、CV率を上げるホワイトペーパー的キラーコンテンツは少なめですので、CVRはどうなのかは未知数です。
しかしながらチャットワーク様は、ITリテ高を狙うSlackや、大企業狙いのTeamsとは違い、簡素を追求しています。スモールBもしくは個人事業主狙いの事業方針です。
単価感的に個人でも導入できる千円満たないツールの部類、かつUI・UXも高く、非常に汎用的なツールです。よってキラーコンテンツなくともCVには貢献している可能性は、なきにしもあらずです。(非常に気になる)
DeNA様(DeNAパレット構想の各種メディア)
こちらはあえて触れさせていただきましょう、オウンドメディアの黒歴史、日本のSEOにおいてGoogleが個別対策したきっかけであるWQLQ騒動に関わる、DeNA様のメディア各種の事例です。
DeNA様の各種メディア構想ついて
以下のメディアを同時並行で立ち上げ、膨大なコンテンツの量産を始めました。元々は村田マリさんがやっていたメディアをDeNAが買収したことが発端。買収される前はまだ明確なビジョンがあった模様です。
引用:IT media
私某社の受託部署で、この立ち上げに参画、複数の多くのベンダーが参画し、そのうちの一つのオペレーショナルマネージャーが私でした。
施策展開について
基本的には質<数。アクセスに対しての広告収益が主眼でした。コンテンツの種別としてはまとめ記事、ナレッジ記事などです。(以下参考はMery)
裏側のオペレーションは共通のCMS、レギュレーションを策定。全てに横展開。
メディア合計での納品は月間数千記事を超え、年間では万の記事の更新を超えていました。この開始時期は2014〜2015年程度だったと記憶しています。
まだ現代の様なSEO評価の高度化はなくEEATなどが策定される前。この頃はまだ長文を書けば上がる時代で、優れたWEBコンテンツをアップせねばならぬ今とは少し状況が違いました。
具体的成果
途方も無い、莫大なアクセスを稼ぎました。一定の広告収益を上げられました。
すでに買収時には時価総額50億規模でしたので、想定ですがそれの横展開で資本を元にスキームを振り回した為、各メディア単体ごとに億単位の収益は上げていたことは推察できます。
ところが低単価でチェックバック工数は最低限で膨大な数を更新しすぎた弊害が来ました。DeNAはコンテンツに関わる監修や校正をするコストを許容せず、外部に大量に発注していたのです。
各種ベンダーは検品や監修をすることができない状態でした。入れたら赤字という状態です。「1円ライター」という言葉が出来上がったのも、このプロジェクトが発端だった様に思います。
そしてWELQ騒動へ
結果、業界に携わる方であれば有名な事件ですが「WELQ騒動」というものに発展しました。端的に言えば、薬事法違反、かつ嘘のコンテンツを膨大に量産する結果になり、その責務を取ることになりました。
例えば「死にたい」で一位、「ヘルニア」でSEO一位ですが原因は幽霊だ、など。
このプロジェクトは一定期間続きましたが、実はすでに水面下で2ちゃんねるができ愚痴の更新がされ、Twitterはすでに「ありえないだろ」「なくなるべきメディア」と有識者が発信するなど、荒れていました。
それを把握した現場のベンダーから方針や単価修正を提案するも、運営側より却下されるような状況でした。
最終的な末路
薬事法違反などの法律に触れ、経営陣は謝罪。10個のメディア事業はほぼ閉鎖。および法令遵守してアクセスがあるメディアはiemoとMeryのみ残し、子会社として続けるに至りました。
引用:東洋経済オンライン 撮影:今井康一
また、これをきっかけに日本独自のYAYL、特に医療系などに対しては個別のアルゴリズムがGoogleで構築されました。低単価で大量に書く医療系メディアやキュレーションメディアがこの際に多数あったのですが、そのメディアのSEOは総じて壊滅的になりました。(なので他のクライアントの流入も壊滅的になり、いくつかメディア事業自体が頓挫)
後にiemoも封鎖。最終的にはMeryだけ残っています。残したMeryはメディア運用を見直し存続しています。
振り返った個人的意見
DeNA社としては手痛い教訓のはずです。それに携わったベンダーは見て見ぬふり。ベンダー各社は、DeNAと関わったことを公にしない様に、ベンダー自体からも社内通達が出る始末。自分の会社が上場監査などに引っかかるため。
一方、皆が保守に徹する中、SEO黎明期から介在する私は「いつの日か絶対こうなるしそうすべき。ライターがかわいそう」と現場でずっと思っていたことであるので「Google グッジョブ」と個人的には心の中でつぶやいていました。
そのGoogleサイドの動きの速さは、2011年のペンギンアップデート、ブラックハットによる意味ない外部リンクSEO一掃以来の感動でした。
ある意味良い経験、その騒動の渦中に携われてたのは貴重だったのかなと思います。( 怒られたらこの事例部分は消します )
しかしながら「ちゃんとやれば」ここまで至ることはないのでほとんどの方はご安心いただけたらと思います。こちらのケースの場合は、収益を追い求めすぎ、ユーザーに対しても、ベンダーやライターなステークホルダーに対しても適当すぎたのです。
オウンドメディアは莫大な成果を上げるが、根底の収益・企画・運用設計が要になる
以上の様に、設計の仕方次第で莫大なリターンがあります。
費用の回収目線では、目的やキーワード設計、付随施策、タイムライン判断を間違えると投下コストに対してびっくりするくらいペイしません。
仕組み目線では、立ち上げてからの情報発信を継続させる仕組み、常に起案・作成・改善のPDCAを回す仕組み・現場業務リソースの生合成がさらに大事です。
WEBメディア立ち上げが一通り落ち着いた2024年現在、運営途中から介入することが弊社は多いですが大体は「前提・設計間違い」もしくは「こだわりすぎ」が多い印象があります。バランスと閾値も大事です。
この「ちゃんとした運用」もしくは「しっかりした設計」が難しいのです。ここの実設計・運用が甘くそもそも放置している企業様、結構いらっいます。失敗しない立ち上げ・運営ご希望の場合には弊社にお声がけください。
一番下のCTAだけでなく一応はプランとして切り出してある為にご興味ある方はこちらのページもご覧くださいませ。